鉄道に生きる

穗積 元太 近畿統括本部 京都保線区 京都保線管理室 係長

列車が安全・安定して走る線路を守り続ける

レールの高低差を測る。

 東海道、山陰、奈良、湖西線を管理している京都保線区。穗積は、同区の京都保線管理室で係長として勤務している。

疑問に感じたことはまず調べる

作業前のミーティングで注意点などを確認する。

 2003(平成15)年4月に入社し、初めての職場は吹田保線区(現在は高槻保線区)。当時、保線の基礎知識はOJTで身に付ける必要があり、先輩から叱咤激励され、同期と切磋琢磨しながら、一人前をめざした。入社2年目から現在に至るまで心がけていることがある。それは、疑問に感じたことはまず調べるということだ。1年目は指示されたことを遂行するだけで精いっぱい、分からないことがあれば先輩に聞いて教えてもらっていた。2年目になり後輩ができたとき、これまでと同じように分からないことを先輩に質問したところ、「自分で調べもしない社員には教えることはない」と言われた。教わるだけだった1年目と、後輩に教える立場でもある2年目で、仕事に対する姿勢が同じではいけないのだと感じた。これまでの考えをあらため、ルールの背景や仕組みをまずは自分で調べることを徹底し、その上で分からない場合は質問し理解を深めた。そうすることで感覚でなく根拠に基づいた知識を身に付けることができ、後輩にも自信を持って指導できるようになった。

迷ったときの答えは現場にある

レールの高低差をなくす。

 2006(平成18)年、吹田保線区向日町管理室に異動となった。軌道管理担当として線路状態が悪い箇所のデータを並べ分析していたとき、どうすれば乗り心地が良くなるのか、どのような整備が最適なのか、悩むことがあった。そんなとき、ベテランの先輩から「悪い線路も悪くなる原因も全て現場にある。机上でばかり考えていると、簡単なことでも気づけないものだ。現場に行くことで見えてくるものがある」と言われた。安全確保の観点から線路上に出るには誰かに同行してもらわなければならず遠慮しがちであったが、この声かけにより、どんどん現場に出て自分の目で実際に見てみることで、より良い改善策を出せるようになった。

段取り八分

グループ会社・協力会社の皆さんと作業の注意点を共有する。

 2012(平成24)年に社内のステップアップ研修を修了し、2013(平成25)年に大鉄工業株式会社に出向した。おおさか東線の切り替え工事を行っていたタイミングであり、実際に工事作業を行う作業員、工事の指揮をとる軌道工事管理者として、この一大プロジェクトに携わることとなった。線路の切り替え工事は、さまざまな系統の多くの仲間との連携が必須となり、分単位の作業工程が組まれ、少ない時間の中で多くの作業を行わなければならない。また、これまですでにある線路を保守するのが役割だった穗積にとっては初めての大規模工事であったため、事前のシミュレーションを繰り返し丁寧に行った。「経験がない中でも軌道工事管理者として大規模な工事を無事終えることができたのは、準備が万全だったからだと思います。“段取り八分、仕事二分”という言葉もありますが、準備がいかに大切であるかを、身をもって学ぶことができました」。

いつもどおりの毎日に達成感を感じながら5つの率先垂範

 現在は係長として、検査・保守計画の策定や日々の実績管理、社員の育成などを担っている。「お客様の当たり前の日常を守るために、私たちの仕事はあります。いつもどおりであることが当たり前なので、日の目を見ることは少ないですが、何も起こさない1日の連続に達成感を感じながら、安全・安定輸送に全力を尽くしていかなければならないと思っています」。

 最後に社員の育成で大切にしていることを聞いた。「特に年次が若いころは、いろいろとチャレンジするようにしてきました。その分失敗もしましたが、先輩や上司にフォローしてもらって乗り越えることができましたし、失敗から学ぶことも多くありました。安全に関わる失敗は避けねばなりませんが、そうでなければ失敗を恐れずにトライすべきです。後輩には受け身でいるのではなく、積極的にチャレンジすることを促しています。また、①分かったふりをしない ②手抜きをしない ③口先より実行 ④周囲の意見に耳を傾ける ⑤最後までやりきる、この5つの率先垂範を心がけています」。

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